2018-11-05
鹿児島ふるさとの昔話
発行所 株式会社 南方新社
発行者 向原祥隆氏
編者 下野敏見氏
「鹿児島ふるさとの昔話」より鹿児島県内各地に伝わる昔話をお伝えします。大河ドラマ「
閻魔大王の首
昔、西南の役で
その辺見十郎太と村田新八、桐野利秋の三人は大の仲良しじゃったげな。あるとき、
「
そのうちに西南の役が起こって、三人とも戦死したので、約束通り三人一緒になって極楽目指して行っおった。ところが、地獄、極楽の境という場所があって、そこに大きな体の閻魔大王がいて太か目をぎょろりとむいて、三人を睨み付けたそうじゃ。手には帳面と筆を持ち、ひざには
「うんにゃ、こら。西郷先生の目ん玉よっかい太か目ん玉じゃけい」
と村田新八が言うと、辺見十郎太は、
「
と言った。すると閻魔大王は、
「えー、そうか。そんならお前達ゃ極楽ぃ行かしてやろわい」
と言った。その時、桐野利秋が、
「あん閻魔大王ん膝ん上に座っちょい
と言うたげな。それを聞いた辺見十郎太と村田新八は腹をかかえて、
「わっはっはっは」
「わっはっはっは」
と大笑いした。閻魔大王は顔を真っ赤にして、
「お
と怒鳴った。すると、桐野利秋が、
「うーん、
と言った。閻魔大王は烈火のごとく怒って、
「言わせておけば、どしこでん
と叫んで大きな金鋏を振り上げて見せた。辺見十郎太は我慢が出来なくなって、
「えー、こと面倒じゃ」
と言ったかと思うと、長い刀に手をかけた。閻魔大王を本当に斬るつもりはなかったが、長い刀なので力一杯引き抜いた途端、
「うえーっ、こら、ちょっしもた」
三人は慌てふためいたが後の祭り。どう仕様もない。閻魔大王の首は太か目をむいたまま三人をにらみつけていた。
「こら、も、仕方はなか。閻魔大王がケ死めば、どっち行きよもなかが。いっそんこて、極楽さい、ハッ
こうして三人は悠々と極楽に行ったそうじゃ。閻魔大王がいなくなったこの時から、ケ死んだ人は、みんな極楽へ行くようになった、と。
それまで大釜に人を入れて煮たり、針の山を歩かせたりしていた地獄の赤鬼、青鬼はいらなくなったげな。
そいからというもの、どんな宗教の人もどんな悪事をした人も、先の世ではみんな、極楽に行くようになったそうじゃ。
そげな話、じゃったちゅ。