種子島の民話 「なえの始まり」

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種子島の民話

発行所 株式会社 未來社
発行者    西谷能英氏
編者     下野敏見氏
日本の民話34 種子島の民話第二集よりお伝えします。

 

 

なえの始まり

 むかしは地震のことを「なえ」といいました。
 ところで、どうしてなえが起こるかといいますと・・・・。
 それはそれは長い「なえ」という魚がいて、その長さと言ったら考えられないくらいなのですが、このなえがぐるりと地球を一回りしているのです。
 このなえの魚は、自分の尾を自分の口でくわえて、地球を丁度「たが」のようにしめているのです。が、このなえの魚も時々自分の尾をくわえはずすことがあります。
 すると、地の弱いところが割れたり、ずれたり、山が崩れたりしてなえが起こるのです。
 ところが、日本の国で一ヵ所だけ、京都だけはなえがありません。と言いますのは、このなえの頭がちょうど京都になっていて、その一番の所に経塚(きょうづか)があるのです。
 そして、なえの魚が少しでも油断をして、尾をくわえはずしたりすると、経塚がそのすごい重さでなえの魚の頭をおさえるのです。それで、なえの魚は慌ててはずした尾をくわえるのです。
 今でもそうですが、地震が来ると、人々は皆
「きょうづか、きょうづか、きょうづか」
と唱えます。
 油断して尾をくわえはずしたなえの魚は、その声でハッと我にかえって尾をくわえます。すると、たちまち地震は止むのです。
 なえの始まりはまずこういう次第ですが、皆さんも地震の時は、
「きょうづか、きょうづか、きょうづか」
と唱えることですね。